南相馬市の生産者

「常磐もの」を支える力
鹿島区
遠藤明さん

相馬双葉漁業協同組合に所属し、ヒラメ・カレイ等のさし網漁をしている南相馬市鹿島区遠藤明さんに伺いました。

南相馬市での漁業について

南相馬市沖の漁場は、親潮(冷たい北からの海流)と黒潮(暖かい南からの海流)がぶつかる潮目で、魚のエサとなるプランクトンが多く発生する豊かな漁場であることから、種類が多く良質な魚が獲れ、古くから「常磐もの」と呼ばれ、全国の市場から高い評価を受けていました。

「今の季節だとヒラメ、カレイ、シラウオとか最近は温暖化の影響なのかトラフグ、最近『福とら』(福島県産トラフグ)と呼んで新しいブランドとして売り出しています。あとは、伊勢海老、タチウオですかね。いろんな魚が獲れますよ。」
遠藤さんのさし網漁はヒラメが好調で、50cm台の1.5〜2kgサイズが業者さんには喜ばれるとのこと。その要因として、ヒラメの稚魚を養殖・放流し、資源を維持しながら漁獲する「育てる漁業」に取り組んでおり、規定サイズ以下は再び放流するといった細やかな配慮も行っています。

漁師の仕事について

漁師になるきっかけは、祖父母の影響が大きいそうで、小さい頃からおじいさんのお仕事をお手伝いしながら、漁港で遊んでいた遠藤さん。思い出の写真を見せていただきながら、
「父はサラリーマンだったんですが、漁師をしていた祖父にすごくお世話になったんです。高校卒業する時に、祖父への恩返し、お手伝いのつもりで漁船に乗ったのが始まりです。震災の時には、船が無くなってしまったので、一時中止していましたが、震災後、叔父さんから手伝ってほしいということでまた漁師をすることになりました。」

漁師の仕事は、前日にさし網を仕込み、一旦家に戻り、翌日早朝の日が登る前に船を出し、網上げを行うそうです。漁師のお仕事は朝が早くて大変ではあるものの、毎日が勉強だそうです。
「自分が狙った場所に網を仕掛けて翌朝引き上げて、狙った魚がたくさん取れる楽しさは、網をあげてみないとわからない面白みというか夢があって楽しいですね。(笑)」「それでも魚が少ないと商売にならないし、潮の流れや仕掛ける場所が悪かったのか、魚の取れない時の方が勉強になって、毎日がチャレンジなんだと思ってます。」
また、自然が相手の仕事なので、天気予報をチェックしたり、網を修理したり、船のメンテナンスや整理整頓など漁師の仕事は、魚を取るだけではなく、計画・準備を確実にして安全に運行し、港に帰ってくるという厳しい一面もクリアしてこその楽しさであると付け加えていました。

漁業のつながり

漁師さんたちは仲が良く、海や船の情報交換などを行なっているそうです。震災を経てその絆は強まり、漁協さんを中心にチームワークが生まれたそうです。
「私一人では絶対漁業なんてできません。いろんな漁師の仲間がいて、船を作ってくれる造船所さん、電気屋さんとか、機械屋さん、網屋さん、それで仲買人、業者さん。それと漁業組合の方とか色んな人がいて初めて魚取ってきて売りにつながる。誰かが欠けてもダメなんです。みんながいてくれる事、常にみんなに支えられている事に感謝しています」。

安全安心の取り組み

遠藤さんが所属する相馬双葉漁業協同組合は、平成15年10月に福島県浜通り地方の新地町から富岡町までの漁協が合併してできた漁協です。
現在は、本格操業向けた、操業体制・水揚げ量・流通量を震災前に回復する拡大操業をして行なっています。
「水揚げした魚は漁協の独自の検査場で検査しています。安全を確認してから市場へ出荷されています。常磐もののカレイと言ったら煮付けなんか最高ですから(笑)。早くみなさんの食卓に並んで、安心して食べてもらえたらうれしいです。」

※さし網漁とは、魚の通り道に帯状の網をカーテンのように垂直に仕掛け、魚を絡めてとる漁法です。
さし網漁の歴史は古く、網目より小さい魚はすり抜けることができ、水産資源の持続化に適した漁法と言われています。

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