南相馬市の生産者

牛たちとの暮らし、新しい挑戦
原町区
柚原ファーム|柚原友加津さん

南相馬市原町区で25頭の牛たちと酪農を営む柚原友加津さん。
牛たちとの暮らしの醍醐味や、新たな挑戦について伺いました。

牛たちとの一日

南相馬ICから車で約5分。看板を目印に車を停めると、動物の鳴き声が。建物の中を覗いてみると、鳴き声の主は牛たちでした。黒い模様の子や茶色の子まで、見た目の異なる牛が肩を寄せ合っています。

ここ「柚原ファーム」を営むのは柚原友加津さん。小さい頃から牛が身近にいる環境で育ちました。お父様から農場を引き継いだ柚原さんは、小さい牛を含めて25頭の牛たちを飼育しています。

そんな柚原さんの一日は、朝6時頃からはじまります。

「朝はまず、25頭の牛たちに餌をあげ、その合間に乳搾りをします。乳搾りは朝と夕方の2回、タンクに貯めるところまでが一連の流れです。タンクに貯めた牛乳は、ローリーで乳業メーカーに運ばれて商品になり各地に出荷されます。牛一頭あたり朝夕併せて約20〜40リットルを搾っているので、合計400リットルくらいは出荷しています。」

牛たちへの餌は、自家栽培の牧草、南相馬市内で作られているとうもろこし、輸入した乾草と配合飼料です。餌のやり方にはこんな手順がありました。

「餌は混ぜるのではなく、一種類ずつ与えています。胃の中で微生物が働きやすいようにするため、最初に牧草、穀物、とうもろこしの順であげています。」

食べるペースや牛の体調はどのように見極めているのでしょうか。

「お産の後は体調を崩しやすいので、その間も餌をちゃんと与えて体調管理をしてあげるのが大事ですね。体調が悪い牛はどことなく雰囲気がぼやーっとしていたり、尿の匂いが変わったりするので、それらをサインに薬をあげるなど調整しています。」

また、牛は暑さに弱いため、夏場は扇風機を回して暑さ対策をされていますが、南相馬市は沿岸部で比較的涼しいので、暑さに弱い牛にとっても過ごしやすい環境です。なんと、牛の体温は39度ほどあるそうなので、冬は元気で健康なんだそう。

酪農をはじめて20年弱になるという柚原さん。長年の経験と共に牛のささやかな変化を見極められるようになったといいます。

生きものと関わる面白さ

白地に黒い模様のホルスタイン、茶色のジャージー牛、白っぽい色をしたブラウンスイス。牛舎に並ぶ牛たちは見た目もさまざま。性格もそれぞれだという柚原さん。

「触ろうとすると自分から顔を出してくる牛もいれば、臆病でそっぽを向く牛もいるんです。搾乳の時も落ち着いている牛もいれば、足をバタバタさせる牛もいます。

牛は夕方の餌をあげた一時間後くらいには横になって寝るのですが、朝になるとまた起きて待っている。餌をもりもり食べている姿や、目を見ると癒されます。この間、ブラウンスイスの子牛が生まれたばかりなのですが、可愛いんですよね。作業をするのは大変ですが、自分でやった手応えがすぐ感じられるので面白いです。」

意外にも、柚原ファームの牛のお産は、介助することはなく、分娩スペースで牛自ら産んでいくといいます。

「新しい牛が生まれて、少しずつ牛も代替わりしていく。メスが生まれたら育て、オスが生まれたら他の農家に販売してそこで育て、それは食肉となる。そうやって私たちの所得のバランスも取らせてもらっています。」

酪農家としての柚原さんの仕事と牛たちの生命力に、敬意を感じました。

酪農家としての新たな挑戦

柚原さんがはじめた新たな挑戦が、チーズづくり。月に4回、農場の敷地内の加工場で作られるフレッシュなチーズは、南相馬市内のスーパーや直売所などで販売されています。

「ずっと加工をやりたいと思っていて、ようやく形になってきました。現在作っているのは、モッツアレラチーズ。実は、季節によって味が変わります。夏の牛乳は乳成分が薄くなる一方、冬は乳成分が濃くなり、脂肪やたんぱく質が高くなります。夏はさっぱりとした、冬はコクのあるチーズに仕上がります。」

チーズの美味しい食べ方の研究にも余念がありません。

「ドライフルーツとの組み合わせはおすすめです。干し柿とも合いますし、近隣の新地町ではいちじくを作っているので、ドライいちじくも良いですね。アボカドとチーズを角切りにしてわさび醤油をつけて食べるも良し、温かいスープに入れて溶かすのも良し、自由に楽しんでいただきたいです。」

次に挑戦してみたいチーズは?と尋ねると、ひょうたん型をしたカチョカバロ、おぼろ状のリコッタチーズ、勉強会で学んできたばかりのハードチーズ......と、柚原さんから次々とチーズの名前が挙がりました。

淡々と、でも確かに愛情を感じる牛たちへの接し方。その信頼関係から採れる牛乳を使って作られるチーズ。今後の柚原さんのあたたかい挑戦が楽しみです。

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