南相馬市の生産者

若い担い手とつくる農業の未来
小高区
紅梅夢ファーム

南相馬市小高区にある「紅梅夢ファーム」は、お米やたまねぎなどの栽培や、パックご飯、菜種油などの商品開発をしています。紅梅夢ファームの目指す未来の農業について、代表の佐藤良一さんと、30代で活躍するスタッフの本田暁さんにお話を伺いました。

20〜30代が活躍する会社

のどかな山間にある「紅梅夢ファーム」の広々とした敷地には、若いスタッフの方の元気な声が響いています。

それもそのはず、紅梅夢ファームのホームページには、20〜30代のスタッフの写真がずらり。たくさんの若手が農業に携わっている会社です。

「ダンディイケメン社長、とても優しく社員思いの社長です。パソコン操作が苦手でよくパソコンが不調になります。」とユーモアを交えてホームページで紹介されている佐藤良一さんは、小高生まれ小高育ち。24歳から農業に携わり、平成29年に紅梅夢ファームを設立しました。現状、農業は熟練者が支えていて、若い担い手を増やしていくことは容易ではない中、どのように若い方を会社に巻き込んでいるのでしょうか。

「会社を設立した一年目は、60代の方を採用していました。というのは、小高区は福島原発事故の影響で約5年半人が住めない状態が続いていた地域です。その間、30〜40代の小さな子どものいるご家族の中には、新しい居住地を見つけ、もう小高区には戻らないと決心した方も多くいました。この30〜40代こそが次の農業の担い手の中堅層。でも、実際に居住制限区域を解かれて戻ってきたのは65歳以上の方々でした。そのため、その年代の方をアルバイトで雇っていましたが、将来を考えた時にやはり若い人を雇っていくことが大事だと再認識し、短大・大学卒業の若い人を雇うようにしていきました。」

会社設立二年目から、ほぼ毎年新卒採用を行なっている紅梅夢ファーム。地域の学校と連携し、農業体験学習も積極的に行なっています。

「高校二年生とその保護者の方に体験学習に参加してもらい、学校とも良い関係を築いています。紅梅夢ファームに就職したいと言ってくれる学生さんが結構いるようで嬉しいですね。」

農業ビギナーを支えるスマート農業

若手を育てる姿勢で採用をしている佐藤さんですが、とはいえ、新卒の子たちを育てる大変さはあるようです。

「新卒の子たちは農業に関しては素人。大型特殊免許を持っていないので、免許を取るまでの間、私と専務でトラクターを田んぼに運んで練習させました。練習というか毎回本番なんですがね(笑)。ようやく任せられるようになるまで約一年はかかりますし、その一年も毎日同じ作業ではないので、なるべくトラクターを使う作業を任せて慣れてもらいます。

我々長年農業に携わってきた世代は、経験と勘で仕事をしています。若い人たちの経験値を補うためにも積極的に導入しているのが、スマート農業なんです。」

スマート農業とは、デジタル分野の先端技術を活用した農業のこと。具体的には、ロボットや人工知能、モノとインターネット通信を連携させたIoTなどを活用させ、農業に携わる人の負担を減らしたり、効率を高めたりすることが目的です。

このスマート農業を拡めるため、2019年から2021年に農水省が行なった「スマート農業実証プロジェクト」に採択された紅梅夢ファームは、自社だけではなく、福島県、福島大学、農具メーカーなどと連携し、スマート農業を推し進めました。

「紅梅夢ファームでは、自動運転ができるロボットトラクターを使っていて、田んぼや畑の形、畝の作り方を記録して運転させます。また、たまねぎの土作りにもスマート農業を生かしています。トラクターを自動で運転させている間に草を刈ったりできるので効率的ですね。」

ひろがる商品開発

紅梅夢ファームで作付面積の大きいお米は、福島県のオリジナル品種「天のつぶ」をメインに生産しています。

スマート農業を生かし、安全安心な品質管理の証であるJGAP認証と、その福島版のFGAP認証を取得したお米のオリジナル商品「新世代」は、ネーミングやパッケージのアイディアまで、紅梅ファームのメンバーで出しあって作られています。

「消費者の方の中には、南相馬市にいながら福島県産のものを食べないという方が結構いました。最近になってようやく理解が進んできて、南相馬市のお米をたべようという流れが出てきています。」と佐藤さん。

そのほかにも、宮城県のアイリスフーズ、コープ東北と連携して開発したパックご飯や、放射性物質がほとんど移行しないといわれている菜種油など、小高区の美味しい素材を使い、さまざまな形で商品化しています。

夢をみながら未来へ

紅梅夢ファームを訪れた7月上旬は、たまねぎ収穫シーズン。

「紅梅夢ファームで作っている品種は、浜の輝(はまのかがやき)、もみじ3号です。栽培方法はいくつかありますが、うちでは9月頃発芽したものを定植し、6月中旬〜7月中旬頃に収穫しています。作付面積は多くありませんが、管理が難しく手がかかります。作業はうちのスタッフが手分けをして行なっています。」

大型特殊免許を持つ即戦力だと佐藤さんが太鼓判を押す、本田暁さんも、たまねぎの選別作業で忙しい日々。
本田さんは、14年ほど従事していた解体業の仕事を辞め、今年、紅梅夢ファームの一員になりました。佐藤さんと同じく小高で生まれ育ち、佐藤さんの熱意に触れて農業の世界へ入ることを決心したそう。

「以前は、野菜やお米がどうやって作られているか分かりませんでした。たまねぎも、最初はこれが本当に育つのかって感じだったんですが、実際にやってみて、こんなに手間がかかっているんだと実感しています。毎日勉強で、楽しくて仕方がないですね。」と本田さん。

日々色々なことを吸収しながら育つ若いスタッフの方々のことを嬉しそうに話す佐藤さんは、社名に、「若い人たちと一緒に先々を、そして夢を見ながらやっていきたい」という想いを込めたと教えてくれました。

「担い手不足といわれる農業の世界ですが、若い人たちに少しでも関心を持ってもらうのが重要なので、そのためにも、農業について自ら発信することだと思います。消費者の方との交流の機会も作っていきたいので、将来的には農家民宿や観光農園もやってみたい。まずは農業に興味をもってもらい、願わくばそれが、就農に結びついたら嬉しいですね。」

紅梅夢ファームのスタッフが自ら写真や動画を撮って更新するInstagramでは、生き生きとした農業の日常を見ることができます。まずは、紅梅夢ファームの農業と、そこで作られている野菜やお米に興味を持つところからはじめませんか。

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