南相馬市の生産者

小高で人の交流が生まれる場
小高区
小高マルシェ|安部あきこさん・宮川フジコさん

「小高交流センター」内の直売所「小高マルシェ」には、小高区を中心に南相馬の美味しいものや魅力あふれる商品が並びます。
小高マルシェの魅力を、メンバーの安部あきこさんと宮川フジコさんのお二人に伺いました。

鮮度抜群!小高の直売所

とある木曜日の朝9時過ぎ。小高駅前通りにある「小高交流センター」内の一角に、続々と人が集まってきました。南相馬の生産者の皆さんです。皆両手に農産物などを抱えてやってきて、ラックに手際よく野菜や商品を並べていきます。野菜はどれも色鮮やかでつやつや!朝採れの葉物野菜は露に濡れ、鮮度の良さが伝わってきます。

この一角は、毎週木曜日〜日曜日の4日間開かれる直売所「小高マルシェ」。平成31年1月、小高交流センターの開所と同時にはじまりました。

野菜やお米はもちろん、はちみつや木工雑貨なども並ぶ空間は、まさにマルシェさながら。それぞれのラックには、生産者の皆さんの写真とメッセージが飾られていて、店内の雰囲気を盛り上げています。

現在、小高マルシェに商品を出品されている主な生産者は12組。小高区で長らく農業を営む方はもちろん、退職後、自分の趣味を極めようと資格を取得してアクセサリーを作る方や、南相馬市産の菜の花の種を搾って菜の花オイルを作る方など、様々な材料を使ってものづくりをしている方が集まっているのが魅力です。

生まれた地で農業ができる幸せ

南相馬で農業をはじめて50年の宮川フジコさんも、小高マルシェに出品する一人。
化学肥料を使わず、なるべく低農薬を心がけた野菜づくりにこだわり、ねぎ、ブロッコリー、ジャガイモ、さといもなどをメインに季節ごとの野菜を育てています。

小高マルシェを出て、宮川さんの畑にお伺いすると、ちょうど旬のそらまめの箱詰めをされていました。そらまめの枝や葉を一つひとつ摘み取り、均等な量を箱に分けていきます。その手つきは素早く、みるみる箱詰めが進んでいきます。

「農業の仕事はお好きですか?」という問いに、「好きだよ」と即答してくださった宮川さん。東日本大震災後、宮川さんの畑とご自宅がある場所は警戒区域に設定され、長年避難を余儀なくされました。避難していた相馬から南相馬へ戻ることができたのが、平成31年4月。ようやく心置きなく畑仕事ができるようになったといいます。

ちなみに、宮川さんはそらまめをどのように召し上がっているのか尋ねると、「シンプルに塩を振って焼く。凝ったことはできないの、忙しいから。」と笑いながら答えてくださいました。忙しくも充実していることが笑顔から伝わってきます。

話すことを力に変えて

小高マルシェに戻ると、お客様に次々と声を掛けられては楽しそうに話を聞いている女性がいます。小高マルシェの会長を務める安部あきこさんです。

元々、小高交流センターのある敷地には、地元の呉服屋さんがありました。安部さんは、呉服屋時代の様子も覚えている生粋の小高育ちです。

安部さんが農業をはじめて53年。結婚するまで鍬(くわ)を持ったことがなかったといいますが、今はご主人と二人でたくさんの野菜を作っています。この日のマルシェには、そらまめ、グリンピース、キャベツのほか、ほうれんそうやサニーレタスなどの葉物野菜を出されていました。

明るくはきはきとお話しされる安部さん、高校時代は演劇部で全国大会に出るほどの実力だったそうです。将来は劇団に入りたいと思っていたそうですが、色々と考えた上で、地元で結婚して就農することを選びました。そんな安部さんにも、東日本大震災が重くのしかかりました。

「幸い、私の家は高台にあったので助かりましたが、津波の一部始終を目の当たりにしました。一年くらいは言葉にするのが辛く、話せばぽろぽろと涙が落ちてくるほどでした。」

少しずつ、いろいろな思いを話すことで力に変え、震災後から語り部の活動をされてきた安部さん。現在も、双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」を中心に活動を続けています。

「私が劇団に入ることはなかったけれど、東京から劇団に所属する若い子たちが小高に遊びに来てくれて、仲良くなったりしています。75歳になるけれど、色々な人に会って見られているから、しゃきっとしていないとね。」

「演じる」という安部さんの夢は、「話して伝える」に形を変え、色々な人の心のよりどころになっています。

人と人の交流の場でありたい

小高マルシェは、「小高で作った野菜を販売できる場所」であり、「地域の方々が立ち寄れ、コミュニケーションが出来る場所」として、小高にはなくてはならない場所になっています。今では原町区や鹿島区の仲間も増え、南相馬市外からもお客様が足を運んでくれるようになりました。

小高マルシェの商品は、ウェブサイトからどなたでも購入できます。旬の野菜の詰め合わせのほか、新米の季節には「新米詰め合わせセット」、ハロウィンの時期には「プレミアムハロウィンセット」など、季節ごとのオリジナル商品は売り切れてしまうほどです。

さらに、小高マルシェの食材は首都圏の飲食店でも使われているので、南相馬の食材をプロの料理で味わう楽しみも。

いろいろな展開が広がっている小高マルシェを、「人との交流の場で、情報交換ができる場所」だというのは宮川さん。

「自宅で作業をしている時間が長いので、人と会って話をする時間はとても大切です。お名前こそ知りませんが、毎回買いに来てくれるお客様もいて、『今年はだいこんが出るのはいつ頃?』と楽しみに待ってくれている人もいて嬉しいですね。」

小高マルシェ会長の安部さんはこう答えます。

「周りからは『安部さんっていつ休んでるの?』と言われます。しっかり熟睡しているから元気なんだけど、やっぱり忙しい。でも、『安部さんに話を聞いてもらうと安心するんだ』って言ってもらえるから、小高マルシェにいる時間が楽しいんです。」

安部さんご自身も、小高マルシェで人と会い、話をすることで元気をもらえているようです。

鮮度がよく、安全性の検査も行った新鮮な農産物や商品を手に取ることができるのはもちろん、地域の人と顔を合わせて旬な情報交換もできる小高マルシェ。ここでしか味わえないすてきな出会いがあなたを待っています。

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